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2017年6月1日木曜日

~2台のIBM i でSNA (APPC/APPN) 構成~
IBM i でのSNA通信(構成編)

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ここでは、1つのEthernet LANセグメントに接続された2台のIBM iのSNA通信構成を考えてみます。既にEthernet LAN回線の作成は済んでいて、TCP/IPインターフェースの構成で固定IPアドレスがそれぞれのIBM i に割り当てられているものとします。2台のIBM i ですので、APPNのネットワーク機能を提供してくれる「EE」で構成することもできますが、ここではよりシステム資源の使用の少ない「ANYNET」で構成します。必要に応じて様々なオプション通信構成もありますが、ここでは最低限必要な構成のみにとどめます。


1台目:ネットワークID=APPN、制御点名=ABRAHAM、IPアドレス=192.168.1.101/24
2台目:ネットワークID=APPN、制御点名=BRADLEY、IPアドレス=192.168.1.201/24

(※ クリックすると図が大きくなります)

構成にあたっては、まず情報の収集を行います。TCP/IPネットワークでは、IPアドレス、またはホスト名でコンピューターを識別しますが、SNA通信では、「ネットワークID.制御点名」の形式でコンピュータを特定します。一つのコンピュータの中には、SNA通信用の窓口(ロケーションと言います)があり、それぞれのロケーションは「ネットワークID.ロケーション名」で識別されます。
SNAネットワークでコンピュータを唯一無二に識別する「ネットワークID.制御点名」は、そのコンピュータの省略時のロケーションとしても使用されます。別々のコンピュータの中のSNA通信プログラムは、相手コンピュータ内のロケーション(これを「遠隔ロケーション」と言います)と結びついている、自コンピュータ内のロケーション(これを「構内ロケーション」と言います)を通して、相手システム内のSNA通信プログラムと通信を行います。

1)ネットワーク属性の確認
それぞれのIBM i で「DSPNETA」コマンドを使用して、ネットワーク属性を表示します。

・ローカル・ネットワークID(出荷時点では「APPN」)
・ローカル制御点名(出荷時点ではシステム名)
・省略時のローカル・ロケーション(出荷時点ではローカル制御点名と同じ)
・APPNノード・タイプ(出荷時点では「*ENDNODE」)
・ANYNETサポートの許可(出荷時点では「*YES」)
・HPRトランスポート・タワー・サポートの許可(出荷時点では「*NO」)

ローカル・ネットワークIDの「APPN」は変更することもできますが、特に必要のない限りはこのままにしておきます。システム名、ローカル制御点名、省略時のローカル・ロケーション名を、それぞれ別の名前にすることも可能ですが、システム名を除いてそれぞれの名前は、SNAネットワークでは固有でなければならず、管理が複雑になるので、特に必要のない限りは同じにしておきます。なお、システム名の出荷時点の値は、「S」+製造番号となっています。

APPNノード・タイプは、他のコンピュータに対して、APPNネットワーク機能を提供するかどうかを指定するもので、「*ENDNODE」とした場合は提供せず、「*NETNODE」とした場合はAPPNネットワーク機能を提供します。他に、APPNバックボーン・ネットワークを構成する時に使用する、代表ENDNODE的な「*BEXNODE」もあります。この例では、2台のIBM i で、他にネットワーク機能を提供する必要はありませんので、両システムともに「*ENDNODE」にします。

この構成では、「ANYNET」を使用するので、両システムとも「ANYNETサポートの許可」を「*YES」に、「HPRトランスポート・タワー・サポートの許可」を「*NO」にします。

ネットワーク属性の変更は「CHGNETA」コマンドで行います。一部のパラメータは、システム内のAPPN(*YES)となっているAPPC制御装置が、すべてオフに構成変更されていないと変更できません。
APPC制御装置をオフに構成変更するには、「VRYOFF」コマンド、または「WRKCFGSTS」コマンドを使用します。「WRKCFGSTS CFGTYPE(*CTL) CFGD(*APPC)」とすると、一覧を表示して、オプション=2でオフに構成変更することができます。

2)IPアドレスの確認
それそれのIBM i で「CFGTCP」コマンド、または「NETSTAT OPTION(*IFC)」コマンドを使用して、構成したいサブネットに接続されているTCP/IPインターフェースのIPアドレス/サブネット・マスクを表示します。

3)構成のための情報
それぞれのシステムの構成のための情報は以下のようになります。
(A)システム
・ローカル・ネットワークID=APPN
・ローカル制御点名=ABRAHAM
・省略時のローカルロケーション名=ABRAHAM
・APPNノード・タイプ=*ENDNODE
・ANYNETサポートの許可=*YES
・IPアドレス/サブネット・マスク=192.168.1.101/255.255.255.0

(B)システム
・ローカル・ネットワークID=APPN
・ローカル制御点名=BLADLEY
・省略時のローカルロケーション名=BLADLEY
・APPNノード・タイプ=*ENDNODE
・ANYNETサポートの許可=*YES
・IPアドレス/サブネット・マスク=192.168.1.201/255.255.255.0

4)それぞれのシステムでの通信構成
(A)システム
・「CRTCTLAPPC」コマンドを使用して、APPC制御装置記述を作成します。LINKTYPEには「*ANYNW」を指定します。ANYNETでは、ネットワーク層以下はTCP/IPを利用するため、制御装置を接続する回線は指定しません。

  CRTCTLAPPC CTLD(AYBLADLEY) LINKTYPE(*ANYNW) RMTNETID(*NETATR)  RMTCPNAME(BLADLEY) HPR(*YES) TEXT('ANYNET TO BLADLEY')

・「ADDTCPHTE」コマンドを使用して、TCP/IPの構成に、IPアドレスとSNAネットワーク内のコンピュータ名とのマッピングを追加します。SNAネットワークでは「ネットワークID.制御点名」ですが、TCP/IPホスト・テーブルでは「制御点名.ネットワークID」となります。そのあとに、ANYNETを示す予約語「.SNA.IBM.COM」を付けます。

  ADDTCPHTE INTNETADR('192.168.1.201')  HOSTNAME((BLADLEY.APPN.SNA.IBM.COM)) TEXT('FOR ANYNET')

(B)システム
・APPC制御装置

  CRTCTLAPPC CTLD(AYABRAHAM) LINKTYPE(*ANYNW) RMTNETID(*NETATR)      RMTCPNAME(ABRAHAM) HPR(*YES) TEXT('ANYNET TO ABRAHAM')

・TCP/IPホスト・テーブル

  ADDTCPHTE INTNETADR('192.168.1.101')  HOSTNAME((ABRAHAM.APPN.SNA.IBM.COM)) TEXT('FOR ANYNET')

5)構成の活動化
(A)(B)両方のIBM i の構成が完了したら、それぞれのシステムで「VRYCFG」コマンドを使用して、作成したANYNET用APPC通信制御装置を、オンに構成変更します。「WRKCFGSTS CFGTYPE(*CTL)
CFGD(*APPC)」のオプション=1を使用して、オンに構成変更することもできます。

APPC通信プログラム用の窓口であるロケーションは、IBM i ではAPPC装置記述として作成されます。APPC装置記述は、手動で作成することもできますが、APPNの機能によって自動的に作成されますので、APPN(*YES)となっているAPPC制御装置記述に対しては、手動で作成する必要はありません。

(A)(B)のIBM i の例では、両方のシステムでANYNET用APPC通信制御装置をオンに構成変更した後で、例えば(A)から(B)に対して5250表示装置パススルーを実行すると、その時点で両方のシステムにAPPC装置記述が作成され、モード記述が追加されて、APPC装置がオンに構成変更されて活動状態になります。ここで作成されたAPPC装置記述は、(B)から(A)に対してのAPPC通信にも使用されます。

 STRPASTHR RMTLOCNAME(BLADLEY)

6)利用するAPPCアプリケーション用の構成
APPC通信プログラム用の通信構成が終了したら、利用するAPPCアプリケーション用の個別の構成を行います。例えば、5250表紙装置パススルーでは、ほとんどはシステムの出荷時点の状態でそのまま利用できるようになっていますが、仮想表示装置の自動構成数の限定、自動サインオン制御などの調整を行い、分散データ管理機能(DDM)であれば、DDMファイルの作成や、DDMアクセスの不許可などの設定を行います。
ユーザー作成のAPPCアプリケーションを利用する場合、(A)(B)それぞれのIBM i で起動側、起動される側のプログラミングを行います。プログラミングに関しては、別稿でまとめることにします。

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